当事務所の解決事例2
1 事件の概要
ご依頼者様は、自動車の後部座席に乗車して、家族でお盆に故郷へ帰省途中に、赤信号待ちで停止していたところ、後方から、酒気帯び運転をしていた加害者が、ノーブレーキで追突したうえ逃げたという、ひき逃げ事案です。
当初から、ご依頼者様は、頚椎捻挫や腰部打撲等と診断されて治療を続けてきたのですが、首から肩、肩胛骨及び肘など痛みが広がってきて、さらに、頭痛や吐き気、手のしびれ、視力低下、耳鳴りなど日常生活が出来なくなる程、症状が悪化したまま、なかなか改善できませんでした。その後、様々に医師に診てもらう中で、脳脊髄液減少症との診断を受けて、事故から約46ヶ月後に症状固定とされた後に、後遺障害の申請や今後の進めた方について、当事務所に相談に来られました。
2 解決まで
そこで、交渉段階から受任して、加害者側の保険会社の代理人弁護士と交渉を開始するとともに、後遺障害の申請は、当事務所が全面的にバックアップをすることになりました。
その後、後遺障害等級第14級9号に該当するとの結果が出ましたが、ご依頼者様の診断内容、事故後の症状や日常生活の支障等を勘案すれば、納得はいかないことから、異議申立、さらには、自賠責保険・共済紛争処理機構に申請して、徹底的に争いました。
残念ながら、より上位の等級認定にまで至りませんでしたが、その最大の理由は、当時、医学界において、脳脊髄液減少症の診断基準等について大きな争いがあり、保険実務でも訴訟実務でも、慎重な態度に出ることが多かったことにあります。また、厚生労働省の研究班が発足して、調査・検討をしている状況も影響を与えたものと考えられます。
そこで、慰謝料や休業損害の増額を目指して、訴訟提起をすることになりました。
提訴後も、加害者側は、治療が長期間に及んだこともあり、症状固定日と脳脊髄液減少症の診断について、徹底的に争ってきました。それに対して、これまで受診した主治医を回り、その意見も取り入れて、主張・立証を尽くして、戦いました。
裁判所からは、既払額を除き約1300万円を支払うとの和解案が提示されました。その際、提訴準備中に出された、厚生労働省の研究班の報告による診断基準が重視されて、残念なから症状固定後の脳脊髄液減少症の治療費は認められませんでした。
だたし、脳脊髄液減少症の治療も含む症状固定日までの治療費、46ヶ月分の通院慰謝料と休業損害、67歳までの逸失利益など、通常の14級を前提としては、訴訟実務上、普通は認定されにくいところについても、和解限りで認定される方向になりました。
和解案については、さらに期日を重ねて交渉に持ち込み、上乗せができて、最終的に1500万円で和解となりました。判決になると、休業損害と逸失利益は大きく減額される可能性もあるため、何とか勝訴的和解に持ち込むことが出来て安堵しました。
3 結果と当事務所のコメント
本件事故当時、脳脊髄液減少症について、まだ多くの整形外科医は知見に乏しかったこともあり、数年後に専門医を受診するまでの医療記録からは、要件の認定が十分になされなかった点で、ご依頼者にとっては、極めて不運で残念であった事案であると思います。
ただし、その点についても、十分な主張・立証に尽くしたことで、訴訟提起前に加害者側が14級を前提として提示してきた約450万円から、2倍以上増額して1500万円で何とか解決できた事案でした。
4 成果
相手方保険会社の提示額から1050万円増額しております。